落書き その１
・性能試験
ブロロロ・・・
滑走路の端で一式艦上戦闘機が離陸準備をしていた。
主翼の下には、戦闘機にはいささか大きい２５０キロ爆弾（の模擬弾）が吊
されている。
「壊すんじゃないぞー」
いささか暢気にすぎる調子で鈴木艦隊司令が声をかける（無論、遠すぎて届
くわけもないが）。
そんな彼を見て、この基地の司令である池田少将が、苦笑を初めとする様々
な感情をうつむき加減に首を振って払い落としていた。
この動作に気付いた鈴木は微笑を浮かべて話し掛けた。
「すまんね、変な事で滑走路を使っちゃって」
「いえ。あなたとは長い付き合いですから、いまさらこの程度の無茶で驚きま
せんよ」
「おいおい、言っておくけど、今回の件は私じゃないぞ。言い出したのは、連
中だ」
そう言って彼は滑走路の端の一式艦上戦闘機をゆび指した。
「え？」
「何でも、魚雷を積んだ状態で、艦のカタパルトで打ち出せるか試したい、っ
て言い出してなぁ。『せめて陸で試してからにしてくれ』と頼み込んだ。機
体を壊されても困るが、艦を壊されるのはもっと困るしなぁ」
「はぁ・・・それはまた・・・大変ですね」
言うべき言葉が見出せず、池田は何とも言いがたい表情で差し障りのない言
葉を選んで、応じたのだった。