落書き その２
・新規部隊、編入
司令長官、山本大将は鈴木中将に対し笑顔で切り出した。
「実はね、一式艦戦の１個中隊が整備出来てね、その隊を君の艦隊に預けよう
と思っているんだけど・・・」
「そいつはありがたい限りです。何しろ、ウチの艦の格納庫は３割ほど空いて
いますからね。それで、どんな部隊なんです？」
「ああ、この資料を見てくれ」
あらかじめ用意してあったらしい資料の表紙を見た瞬間、鈴木は嫌な予感を
感じた。それでも、嫌々ながら手渡された資料を読み進めると、彼は嫌な予感
が大きくなるのを感じた。そして、隊員名簿を見た瞬間、その予感が的中した
ことを悟った。
「・・・女の子みたいな名前の奴ばかりですね、操縦士は」
それでも、予感が外れていて欲しい、と思う鈴木は悪あがきの問いを投げか
ける。だが、山本の答えは無情だった。
「女の子『みたいな』じゃない。操縦士は皆、女の子だよ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
墓場のような沈黙が２人の周りを覆った。たっぷり３０秒ほどしてから、鈴
木はそれはそれは疑わしげに質問を発することで沈黙を破った。
「・・・ご冗談でしょう？」
「いいや」
「軍艦には、女性を乗組員として乗せることはない。これは我が海軍の不文律
だと思っていましたが？」
「無論、知っているよ」
「ウチの艦も軍艦です。一応は」
「それも知っている」
「それなのに、女の子ばかりの部隊を迎え入れろと？」
「その通り」
「・・・理由をお聞かせ願いたいですね」
再び５秒ほどの沈黙をおいて鈴木がそう言うと、山本は軽くため息をついて
事情を話し始めた。