落書き その５
・初陣（空戦編）
６機の零式艦戦と１８機の一式艦戦は二手に分かれた。零式艦戦６機、一式
艦戦９機の計１５機は直衛機のブラックキャット（わずか９機）に襲いかかる。
残る一式艦戦９機はゆるやかに降下しつつ、外縁部に位置する駆逐艦に向かっ
た。そして、先に戦闘が始まったのは、当然のごとく戦闘機同士の空中戦であ
る（双方が戦端を開くために近づきつつあったのだから当然だが）。
空中戦は零式艦戦６機の正面突撃で幕を開けた。
「散開しろ！」
連邦側の直衛隊指揮官はすかさずそう命じて、突撃してくる敵の精鋒を避け
る。この動きに呼応して、零式艦戦隊も散開し思い思いの敵機に食らいついた。
たちまちにして、運動性だけが頼りの空中格闘戦が始まった。だが、零式と強
艦戦とブラックキャットでは数が違う。零式艦戦に食いつかれずに済んだ３機
引な急降下と加速で振り切った１機が、直衛隊本来の任務−艦隊に向かう攻撃
隊の阻止−を果たすべく、ゆるやかな降下を続ける一式艦戦９機に向かった。
「行かせるかよ！！」
パイロット達はブラックキャットを勢い良く突撃させたが、それはあまりに
無謀な行動であった。何しろ、一式艦戦が９機まるまるフリーでいたのだから。
その事実に彼らが気付いたのは、一式艦戦の２０ミリ機関銃の射撃音を耳にし
た直後。あまりに遅い反応である。
このミスの代償を、彼らはすぐに支払うことになった。まず、４機のうち３
機が２０ミリ機関銃弾の雨でバラバラに粉砕された。残る１機も、たまたま射
線上にいなかったという幸運に恵まれたが、その幸運も、彼の寿命をほんの数
分延ばしただけで使い果たしてしまった。
攻撃隊への突撃を諦め、急降下を開始した彼に、９機の一式艦戦のうち３機
が整然とした編隊を組んだまま追いすがった。頑丈さを第一に設計された一式
艦戦は急降下による加速にも耐え、逃げるブラックキャットとの間合いを確実
に詰めていった。
「うわ、うわ、うわ・・・」
背後から迫る一式艦戦の姿に、ブラックキャットのパイロットは恐怖と狼狽
の声を上げた。完全にパニックに陥り、機を捨てて脱出するということさえ思
いつかない。ひたすらにスロットルを開き、速度を上げて逃れようとするが、
全ては無駄であった。
３機の一式艦戦は、悠々と２０ミリ機関銃の射程内にブラックキャットをお
さめると、容赦なく機銃弾の雨を浴びせかけ、一瞬で最後の一機も粉砕したの
だった。
一方、零式艦戦と残り５機との空中格闘戦もほぼ同時刻に終結した。零式艦
戦が３機を撃ち落したところで、下方から６機の一式艦戦が急上昇して参戦。
一瞬で残る２機を叩き落したのだ。