第三部隊存続を確定させ、隊長に任命されたデアリングは、ランディよる由
羅誘拐を阻止する際、破壊されたトンファーに代わる武器を自前で作り上げよ
うとしていた。
無論、トンファーの代替である以上、殺傷能力は最小限に押える必要がある。
また、袖に収めておけるほどコンパクトである必要もある。そして、いざとな
れば殺傷能力を強化出来るようであればなお良い。しかし、こんな無茶な要求
を、通常の武器で実現できるわけがない。
（と、なると、これの原理を応用しなきゃだめ、か・・・）
そう結論付けると、デアリングは腰に下げた魔力銃を取り出した。
回路を介して魔力を様々な弾に変換し、撃ち出す魔力銃。変換されるものは、
相手を凍りつかせる氷結弾、目標に向けて誘導される誘導弾、相手に強烈な衝
撃のみを与える物理打撃弾等、実に多彩である（無論、通常の銃同様に相手を
撃ち抜く能力を持った弾も撃ち出せる）。
デアリングは、この回路を利用してトンファーに代わる、多目的に使える武
器を作ることにしたのだ。
カチャカリャ・・・
第三部隊の部屋で、デアリングはいくつかの部品を組み合わせ、それを剣の
柄と同じサイズの筒に収めていた。無論、それらの部品は全て魔術師協会で入
手した魔力回路である。
「また、新しい武器？」
「まあね。今回は自作だけど・・・」
さすがに気になったヴァネッサの質問に、デアリングは顔も上げずに応じた。
丁度、もっとも厄介な作業にさしかかったので、目を離せないのだ。その辺の
雰囲気は彼女にも伝わってきたので、あえて無理に自分に注意を向けさせよう
とはしなかった。おかげでデアリングは作業に集中でき、５分で作業を終わら
せることが出来た。
「よし、出来た」
「終わった？」
筒の両端に最後の部品を付けて呟いたデアリングに、ヴァネッサが振り返っ
た。
「ああ、お待たせ」
「何を作っていたの？」
「これ？」
彼女の問いに、デアリングはたった今完成したそれを取り上げて見せた。た
だし、回答は直接的ではなかった。
「今年の初めに魔力銃ってものをもらったの、憶えている？」
「モーリス会長からの謝礼の品でしょ？忘れられないわよ」
ヴァネッサは苦笑してみせた。ヴァネッサが公安維持局に籍を置いたまま、
デアリングの手伝いをしていた１月。娘のマリアを山賊から救出した謝礼とし
て、モーリス会長から試作品の魔力銃がデアリングの元に届けられたのだ。
「それの魔力回路を使って、新しい武器を作っていたんだよ」
「魔力銃なの、それ？」
「いや、魔力剣と言うべきかな？魔力を変換するのは同じだけど、それを撃ち
出すんじゃなくて、刀身を形成させるんだ」
あっさりとすごい事を言われ、ヴァネッサは絶句した。
「そんなこと出来るの？」
デアリングは椅子の背もたれに身体を預けつつ、いたずらっぽい笑いを浮べ
た。
「そりゃ、魔力をいろんな物に変換して使うのが物理魔法なんだよ。刀身を形
成するくらいは出来るんじゃないかな？」
「それは・・・そうだろうけど・・・」
「まぁ、これは試作品だしね。これから上手く動くか、試したいんだけど・・
・」
「出かけるのはなしよ。今のシフトは待機なんだから」
デアリングの先を取って、彼女は釘を刺した。その対応に、デアリングは苦
笑を浮べた。
「あ、やっぱり？」
「はぁ・・・」
ヴァネッサがため息をつくと、まるで計ったようなタイミングで、第二部隊
から異動してきたヒサメが姿を見せた。
「デアリングさん、ちょっとよろしいですか？」
「何かあった？」
「ええ・・・その・・・」
暗灰色の髪の少女はわずかに言いよどんだが、深呼吸を１つすると、思い切
って切り出した。
「ライシアンハンターの情報が入りました」
その一言で、デアリングが身にまとっている雰囲気が一変した。それまでの
穏やかな、のんびりとした小春日和を連想させる雰囲気が消え、凍てついた、
容赦のない吹雪の気配が漂う。はっきり言うと、デアリング・デッキサイドと
いう人間はライシアン・ハンターという人種を嫌っている。そして、彼らから
『商品』のライシアンを買うような人種も。どちらも「ライシアンなんか」と
見下しているからだ。そんな風に他人を見下すような手合いを、彼は心底から
嫌っている。無論、由羅と親しいという個人的な感情も多大に影響しているで
あろうけれど。
そんな理由から放たれる剣呑な雰囲気にも負けず。ヒサメは報告を続けた。
「先だって、ピュータス・カジノを襲ったハンターの残党が、エンフィールド
の方向に逃走したそうです。再起を図る可能性もあるので、警戒してほしい、
と・・・」
「分かった」
デアリングは１つ頷くと、ため息をもらした。
「テストの前に一仕事、か・・・」
とはいえ、すぐに行動を起こせたわけではない。ヴァネッサが語った通り、
第三部隊は待機中、つまり、何かあった時すぐに動けるように手空きの状態に
しておかねばならないため、動き回るわけにはいかないからだ（依頼で出払っ
ている団員は別）。
結局、デアリングが動けるようになったのはその日の夕刻、待機が終わり、
自由に動ける非番になってからだった。
それに、出来ることなど大してなかった。すでに第四部隊が捜索にあたって
いたが、残党の居場所は未だ判明していない。
こんな状況下で、さらに第三部隊が捜索に加わるのは得策ではない。混乱を
引き起こすのが関の山だからだ。
だから、デアリングは他の部隊の邪魔にならない、そして自分がやりたい事
の内、もっともこの件で有益になりそうな行動を選んだ。
由羅の家の周りの警戒である。
「異常なし、か・・・」
由羅の家に近い森の中、デアリングは一回りを終えてポツリと呟いた。と、
言っても夜の闇の中を、誰にも察知されないように明かりも使わずに一回りし
ただけである。これで完全とは言い難い。もっとも、最悪の事態に備えてヒサ
メが由羅の家の屋根の上で待機している。異常が発生したら、ヒサメが急を知
らせる手はずだ。
「ヒサメの方も問題ないようだし・・・もう一回りしてくるかな」
と呟いた時、由羅の家の方から発光信号が打ち上げられた。それは、ヒサメ
の方に緊急事態が発生した事をしらせる信号だ。
デアリングは１つため息をつくと、由羅の家に足を向けた。
「やれやれ、言った途端にこれか・・・」
その頃、ヒサメは６人のハンター相手の戦闘という、彼女にとってはきつい
戦闘を強いられていた。
本来、彼女は隠密行動が担当である。そんな彼女にとって、多数相手の戦闘
とは、逃走の契機を作るためのものなのだ。だが、今回は逃げるわけにはいか
ない。逃げれば、由羅が無防備な状態でライシアンハンター達の前にさらされ
る事になるからだ。
そんなわけで、彼女は相手との間合いを巧みに取ることで攻撃を諦めさせつ
つ、６人の目を引き付けることに専念する方法を選んだ。これであれば、彼女
が実行可能で、かつ、デアリングが駆けつけてくるまでの時間を稼げそうな戦
法であったからだ。しかし、それも限界が存在する。
（早く来て下さい。でないと・・・）
ヒサメは心の中でデアリングに呼びかけていた。別に届くわけでもないが、
そうせずにはいられないくらい、戦況は悪いものだったのだ。既に、彼女には
攻撃を落ち着いてさばく余裕が無くなっていた。今も、斬撃を暗灰色の髪数本
と引き換えにかろうじてかわしたところである。だが、それが相手に攻撃の機
会を与えてしまった。ちょうど背後に１人回りこんでいたのだ。
「もらった！！」
「しまっ・・・」
両者の叫びに、銃声が重なった。
「！？」
銃弾ならぬ光弾の直撃を頭に受けて、ヒサメに背後から斬りかかったハンター
が吹っ飛ばされた。
「誰だ！？」
突然の乱入に、残されたハンターの１人が怒号を張り上げ、振り返る。そこ
には、ヒサメが待ち望んだ人、魔力銃を構えたデアリング・デッキサイドがい
た。
その姿
を認めたハンターの１人が、うなり声を上げた。
「デアリング・デッキサイド・・・」
「へえ、私の名前を知っているのか。なら話は早い。ピュータスカジノ襲撃の
容疑で君達を逮捕する。そこを動くな。すでに包囲してある。大人しく投降
するように。抵抗するなら、実力を持って取り押さえる」
「ハッタリを！貴様が第三部隊を動かしていないことは分かっているんだ！」
デアリングの勧告を、彼は嘲るように切って捨てた。
「へえ・・・」
さすがに驚きの念を禁じえずに呟いたデアリングを指し、彼は言い放った。
「やれ！！」
その声に応じて、残るハンター達がデアリングに襲いかかった。そんな彼ら
から離れるために、デアリングは後ろへ飛んだ。そして、手刀を振り上げると
微笑みさえ見せながら呟いた。
「実力で取り押さえるっていうのは、ハッタリじゃないんだけどね」
そして、振り下ろす。
直後、彼らの頭上から多数の火の玉が降りかかってきた。
最初の発砲を行う前に、デアリングが上空にあらかじめ準備しておいた〈ル
ーン・バレット〉の大群である。
「なっ！？」
デアリングの動きにつられて上に視線を向け、その光景を目の当たりにした
２人は、慌てて横に飛んで直撃を最小限に抑えることが出来た。一方、無視し
て襲いかかろうとした３人の内２人は、多数の直撃弾を受け、地面に叩きつけ
られる羽目になった。残る１人はその２人が多数の火の玉を引き受ける形にな
ったおかげで無傷で済んだ。さらに幸運な事に、地面に着弾した火の玉の爆発
のおかげで盛大な煙が発生し、彼の姿を覆い隠したのだ。
「っと、多すぎたかな？これじゃ、確認出来ないな」
デアリングが苦笑すると、煙の中から何かが彼目がけて飛んで来た。
「！？」
察知したデアリングは、咄嗟に左に飛んでそれの直撃を避けた。だが、それ
が魔力銃の銃身に絡みつくことまでは避けられなかった。デアリングが何か対
応を起こすよりも早く、それは意外な力強さで彼の手から魔力銃を奪い取った。
「ボーラか？」
正体に気付いたデアリングが、その武器の名を口にした。ボーラとは、２つ
以上のおもりを紐でつなげただけの単純な武器である。だが、上手く使えば相
手に絡みつかせて動きを封じたり、今回のように武器を奪い取る事も出来る武
器である。
そんな武器に続いて、無傷で済んだハンターが煙の中から飛び出してきた。
「もらったぁ！！」
銃を手にしていないデアリングを認めた彼は、勝利を確信して叫んだ。だが、
デアリングは少しも慌てる事無くバックステップして間合いを広げると、軽く
右腕を振った。すると、仕込んだ魔力剣が袖から滑り降りて彼の手に納まる。
素早く逆手に持ちかえると、すかさず作動させる。
ブゥン・・・
鈍い動作音と共に、魔力剣から光の固まり放たれ、刀身状に形成される。デ
アリングはそれを剣のように振るい、相手の剣を横合いから弾き体勢を崩して
のけた。
「くっ・・・」
攻撃を力強く撥ね退けられたハンターは、１つうめくと間合いを取り直そう
とした。だが、デアリングはその間を与えず、返す一撃でハンターのこめかみ
を一突きする。光刃は、相手を斬らないように設定されていた。だが、そんな
ことは、一撃を食らったハンターには何の慰めにもならない。衝撃に耐え切れ
ず、白目をむいて崩れ落ちるという運命は同じであったからだ。
「ふむ、ちゃんと機能してくれたな。これなら、合格かな」
その結果に、デアリングは安堵のために頷いた。機能する、とは思っていた。
だが、実際に動かして証明するのは、また別の問題であるからだ。
（さて、この煙を突っ切って、由羅のところに・・・）
「デアリング・デッキサイドはどこだ！？探し出して、必ず殺せ！！」
デアリングがささやなかな安堵に続いて次の行動を決めた時、意外な怒声が
煙の中から飛び出してきた。
（・・・連中、由羅が狙いじゃないのか？）
ライシアンハンターにとって、デアリングのような自警団員、つまり警察関
係者との戦闘は、必須の事ではない。いや、むしろ避けるべき事である。なぜ
なら彼らにとって、金になるのはライシアンを商人に「売り渡す」事であり、
警察関係者の殺害ではないからだ。金にならない（しかも、危険極まりない）
事をする理由はない。
この状況なら、煙がもたらす混乱を利用して由羅を拉致するのが最も妥当な
行動である。なのに、彼らはデアリングの殺害を優先したのだ。デアリングで
なくとも、首を傾げざるおえないだろう。
だが、これはデアリングにとって活用すべき好機であった（何しろ、自分を
囮にすれば由羅を守りきれるかもしれないのだから）。
そこでデアリングは強風を起こす魔法を使って、煙を吹き払うことにした。
先の怒声が偽りでなければ、デアリングの姿を見せる事で由羅から引き離す
事が出来る。もし、偽りであったとしても、視界を確保すれば対応しやすくな
る。そう判断したのだ。
ブォッ！！
デアリングの魔法で発生した強風は勢いよく煙を吹き払い、望みどおりデア
リングとハンター達、それぞれの姿をお互いに認めさせた。
「デアリング・デッキサイドはここにいるよ。さて、どうする？」
そう言い放つと、ハンター達は一瞬怯んだ。こうも正面切って姿を見せると
は思わなかったらしい。そこで、デアリングはさらに心理的に揺さぶりをかけ
にかかった。
「何で私の名前を知っているのか、どうして第三部隊の動きを知っているのか。
自警団の地下牢でゆっくり聞かせてもらうよ」
逮捕を暗示する言葉であったが、ハンター達はたじろかない。それどころか、
口で反撃してきた。
「ほざけ！貴様こそ、そこのライシアン共々売り払ってやる！貴様見たいに細
っこいのは、男色の毛がある貴族どもに高く売れるだろうよ」
「それは辞退させてもらう。私には、そういう趣味はないからね。女性の方が
いい。君たちこそ、自分を売り込んだら？ごつい男ってのも、そういう人に
は人気があるらしいからねぇ」
「てめぇ！！」
どうやら、逆上させる一言であったらしい。ハンター達はデアリング目がけ
て突撃してきた。
これに対し、デアリングは魔力剣を正眼に構えて迎え撃った。この状況だと、
小細工をしても無駄だし、そもそもする暇がない。それでも、デアリングはた
だ正面から力づくの戦いを挑んだりはしなかった。
（手早く決着をつけたいし・・・もう１つ、試してみるか）
そう思い、魔力剣に備えられたダイアルの１つを手早く回して、望みの機能
を起動させる。その間に迫ってきたハンター達の剣を、デアリングは後ろへ下
がるのと体を開くのを同時に行って回避する。続けて、彼の脇をすり抜ける形
になるハンターの胴を、魔力剣で薙ぎ払った。
光刃は、今度は実体が無いもののように相手の身体を通り抜けた。無論、た
だ通り抜けたわけでもない。
「！！」
その事を示すように、ハンターは身体を仰け反らせ、崩れ落ちた。だが、そ
の身体には傷１つついていない。
「な・・・！？いいい、い、一体、どんな手を！？」
最後の１人となったハンターが驚きのあまり、どもりながらデアリングに指
を突きつける。それに対し、デアリングは実行をもって応じた。つまり、わめ
くハンターの胴を、魔力剣で薙いだのだ。
（電撃・・・）
薄れゆく意識の中で、ハンターは自分の身体に走った衝撃の正体を悟った。
そう、デアリングは光刃を電気で構成していたのだ。もっとも、それが分かっ
たところで手遅れではあったが。
こうして、６人のハンターは目的を達する前に倒れ、全員が拘束されたのだ
った。
「ふう・・・」
翌朝。結局、後始末で徹夜する羽目になったデアリングは第三部隊詰め所で
ため息をついた。徹夜には慣れているから眠くはないが、やはり疲労は残る。
少しでも疲労感を紛らわせようと額を揉んでいると、ヴァネッサが姿を見せた。
「おはよう。デアリングくん、昨日は大変だったみたいね」
「ああ、おかげでえらく疲れたよ」
思い切り気だるそうに言うデアリングを見て、ヴァネッサはクスクスと笑い
ながら、彼にとっては意外な事を言ってきた。
「しっかりしてね。昨日はデアリングくんだけじゃなくて、第一部隊も第四部
隊も大変だったんだから」
「それは初耳だなぁ。何があったの？」
「ほら、昨日、話に出たピュータスカジノの襲撃犯が北の森に立て篭もってい
るのが夜になって分かったらしいの。それで、第一部隊と第四部隊で包囲し
て逮捕したらしいわ」
「へぇ・・・昨日ねぇ・・・」
デアリングはちらりとヒサメに視線を投げかけた。その意味を察した彼女は、
しかし無言で首を振った。ご希望の情報はありません、と態度で告げられたデ
アリングは肩をすくめた。この時、彼の頭の中にはいくつかの疑問が浮かんで
は消えていた。
例えば・・・
何故、第一、第四の両部隊に捕らえられたハンター達は包囲される動きに気
付かなかったのか？自警団に動きに関する情報がなかったということか？
何故、自分達が相対したハンター達は第三部隊の動静について知りえたのか？
自警団の動きを知る手段を持っているということか？
何故、この両者にこれほどの情報量の差があったのか？彼らは全く別の集団
であったのか？
そして、何故、自分達が相対したハンター達は、ライシアンである由羅では
なく自分を優先したのか？
といったところである。これらから整合性が取れる唯一の推理は、第一、第
四の両部隊に捕らえられたハンター達と、デアリング達が捕らえたハンター達
は、全く無関係な存在で、偶然、同時期にエンフィールドに姿を現した、とい
うものである。
だが、この推理に、デアリングは納得していなかった。遭遇したハンター達
が、何故自分の名前を知り、しかもライシアンの由羅よりも優先して自分の殺
害を図ろうとしたのか？その点が全く不分明だからだ。
そんな思考の深みに、デアリングがはまってしまった事に気付いたヴァネッ
サが、急いで別の話題を振って気をそらせようとする。
「ところでデアリングくん。キミが作っていた魔力剣はどうだったの？」
「ん？ああ、使い勝手は結構良かったよ」
顔を上げると、デアリングはそう応じて魔力剣を袖から取り出してみせた。
トンファーの代替として、本格的に使う事にしたのだ。
「刀身を魔力で構成するから、軽いし、色々と面白い能力も簡単に付与出来る
しね」
そう言うと、彼は魔力剣を作動させ、刀身を形成させた。ブゥン、という作
動音が同時に響き渡る。が、すぐに停止させ、刀身を収める。
「ただ、１つ問題がね・・・」
「問題って？」
「魔力の消費がすごく早いんだよ。昨日使ってみて分かったんだけど、ほんの
十数分作動させただけで、魔晶石１個分の魔力使い切っちゃったんだ」
魔晶石は魔力を貯めておくための魔法アイテムである（魔法が使えない頃の
エルが使用していた）。ちなみに、１個あたりの魔力の貯蔵量は、ほぼ人間が
使える１日分の魔力に匹敵する。それをわずか十数分の使用で使い切ってしま
うのだから、使うタイミングが極めて難しい武器と言える（たとえどれほど便
利だとしても）。
「まぁ、まだまだ改良の余地ありだね。魔力消費をもう少し抑えないと、並の
連中が使えないし」
そう言うと、デアリングは立ち上がって背中を伸ばした。と、思うと不意に
いたずらっぽい笑みを口元に浮べた。
「まぁそういうわけで結構、消耗が激しいんだよね。ちょっと仮眠してくるよ」
そう言って、そそくさと逃げ出そうとしたが・・・
「ちょっと待ちなさい！消耗しているのはヒサメさんだって同じでしょう！デ
アリングくん１人だけ逃げないの！！」
「いや、ほんとにちょっとだけだから・・・」
こうして、ある意味年中行事でもあるヴァネッサとデアリングの言い合いの
喧騒に辺りが包まれ始めた・・・
その後、デアリング達が捕らえたハンター達の正体は判明せず、何時の間に
かうやむやに終わることになった。
だが、この事件で初めて使用された魔力剣は、さらに改良を重ね、デアリン
グの主要武器として、重要な役割を果たし、後に「光の剣」と呼ばれるように
なる。
ＥＮＤ
後書き
松です。「光の剣」をお届けいたします。
２ｎｄ終了後を想定して書いたお話です。
それにしても短い；今はこれが限界かなぁ；
＃あまりそうは思いたくないけど；
ちなみに、魔力剣の元ネタはスターウォーズのライトセーバー。ただし、本
編にある通り、ライトセーバーにはない特殊能力がてんこもりです（笑）。
本当は由羅とのエピソードを盛り込む予定だったんですが・・・まとまらず、
見事に切りました；
ただ、おかげで別のネタが３つばかり思いつきましたけどね（苦笑）。
次は、そっちが来ると思います。
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松