このＳＳはエルの休日イベント「ＢＩＧ ＴＲＥＥ」をベースにしてあります。
まだ、「ＢＩＧ ＴＲＥＥ」をクリアされていない方は、お読みにならない方が良いと思われます。
ＢＩＧ ＴＲＥＥ two sides vision story
始まり グローウォーム・サイド
俺、グローウォーム・グレイフォードは、休みの日にはいつもそうしている
ように、特にこれと言った目的もなくぶらぶらと散歩を決め込んでいた。だか
ら、今回、公園にやって来たのも「単に気が向いたから」にすぎない。だけど、
その「単に気が向いたから」来た公園で、楽しげに遊んでいる子供達を見て心
が和んだのは事実だし、さらにその子供達を嬉しそうに見ている、仕事仲間の
エル・ルイスを見たときには、今日はついてる、と思ったのもまた事実だ。
エルの笑う時と言えば、単なる苦笑か仕事が上手くいった時の微笑みがほと
んどで、無邪気な、あるいは嬉しそうな微笑み、というのは数えるほどしか見
たことがない。だが、それだけにそんな時の笑顔はすごく魅力的なのだ。こっ
ちが思わずドキリとするくらいに。
そんなエルの魅力的な笑顔に、俺はしばらく見とれていた。そして、ゆっく
りとした足取りで、彼女に近づいた。今ならあいつとの話も弾むかもしれない、
俺は何となくそう思ったのだ。
ちょうどその時、子供達が遊んでいた（そして、エルが見つめていた）大木
が不気味にきしむ音が、俺の耳に届いた。
危機 エル・サイド
アタシ、エル・ルイスがそこにいたのは、その木を見たとき何となく嫌な予
感がしたからだ。別に無邪気に遊んでいる子ども達が、アタシに手を振ってく
れたからじゃないぞ。だから、あの木が音を立てた時、ほとんど反射的に走り
出していた。
「エル、危ない、無茶するな！」
グロウ（グローウォームの愛称）の奴が叫んだけど、アタシはそんなこと一
切かまわなかった。あの木を、子供達がしがみついたままの木を地面に叩きつ
けられるのを何をしてでも防ぐ。アタシは、ただそれだけを考えて突っ走った。
「間に合えっ！ちくしょうっ！」
思わずそんな叫びが口から漏れる。その間にも木はどんどん傾いてゆく。
間に合わない！？
一瞬、そんな風に思った。そんな思いを振り払うように、アタシはもう一回
叫んだ。
「うぉぉぉぉぉっ！」
ズン・・・
間一髪ってとこだな。アタシが木の下に滑り込んで、ほとんど頭をかばうよ
うに腕を上げたのと、その腕に木がぶつかったのは同時だった。
「ぐうっ・・・」
さすがに、きつい・・・。たたでさえ、このバカでっかい木に子どもが１０
人以上しがみついている。
加えて、とっさに飛び込んだせいでアタシの姿勢も良くない。このままじゃ・・・
「エル、一人じゃ無茶だ」
不意に、声をかけられた。と、同時に、アタシの目に、木を少しでも持ち上
げようとしているグロウの姿が映った。
「・・少しは楽になったか？」
こんな時でも、いつもと変わらない穏やかな微笑みを浮かべてそう聞いてく
る。別に聞かれたからじゃないけど、少し、楽になった気がした。
本当に気持ちだけかもしれないけど・・・。
それでも、なんだか、すごく嬉しかった。コイツは、アタシがつらい時にい
つもさりげなく助け船を出してくれる。自分の方がつらいはずなのにそんな事
をする、お人好しの大バカぶりが、すごく嬉しかった。だけど、ついつい憎ま
れ口をたたく。
「くっ・・・別にお前の力なんて、いらないよ・・・」
「嘘つけ。その姿勢じゃ、かなりつらいはずだぞ。姿勢だけでも変えろ」
「あ、ああ・・・」
グロウの指摘は、アタシも自覚していた。だから、さすがに逆らう事なく楽
な姿勢を取った。おかげで周囲を見回す余裕も出来た。
もっとも、周囲を見たところで、何の意味もなかったけど・・・。何しろ周
りには誰もいなかったんだ。つまり、アタシとグロウの二人で何とかするしか
ないって事だ。まぁ、最初っから何とかするつもりではいたけどね。
ミシミシッ・・・
また嫌な音がした。どうやら、木が子ども達の重みに耐えかねているらしい。
そして、アタシ達にかかってくる重さも、一段と増したような気がした。
「くうっ・・・」
アタシの口から思わずうめき声がもれる。このままじゃ、駄目だ。そう思っ
たアタシはグロウに向かって言った。
「くっ、グロウ・・・ここはアタシが、支えるから・・・子ども達を・・・」
救出 グローウォーム・サイド
苦しげなエルの声を聞いた俺は、すかさず木にしがみついている子ども達に
視線を走らせた。誰を見ても、この危険に怯えきっていて、とても自力で降り
られそうになかった。で、ある以上、方法は一つしかなかった。だが、それを
実行するには、問題があった。俺はその点をエルに聞いてみた。
「エル、俺が子ども達を降ろすまでの間、この木を一人で支えられるか？」
「あ、ああ・・・何とか、やってみるよ・・・」
「すまない、離すぞ！」
そう言って、俺は木の下から飛び出した。途端に、木がきしむ嫌な音がした。
「くうっ・・・」
「エル！」
「だ、だいじょう・・・ぶ・・・はや、早く！」
思わず振り返った俺に、エルは苦しげに、それでも不敵さを感じさせる微笑
みを見せた。こうなったら、一刻も早く子ども達を降ろす以外、他にやること
はない。一人だけでも逃げろと言っても、エルは絶対に承知しないだろうから。
俺はそう決意すると、子ども達の救出に意識を集中した。出来るだけ落ち着
いた、そして子ども達を怯えさせない程度の大声で、子ども達に語りかけた。
「いいかい、みんな。俺の言うことをよく聞いて。今から一人づつ降ろすから、
ゆっくりと移動するんだ」
子ども達の視線が俺の方に集まると、俺は安心させるために、内心の焦りを
隠して微笑んでみせた。
「大丈夫、俺達を信じて、言うことをしっかり守れば絶対に助かるから・・・」
自分でも大言がすぎるなと思いつつも、そう言った。他に言いようもなかっ
たが・・・。俺は内心で苦笑しつつ、手早く指示を出した。
「ようし、まずは君だ。ゆっくり・・・そう、その調子だ」
おそるおそる、といった風情で近づいてきた男の子を、まずは抱き留め、地
面に降ろす。
「ほら、助かっただろう？さあ、次は君だ。そこの枝を伝って来るんだ」
こんな指示を次々と出しながら、俺は子ども達を一人づつ降ろしていった。
そして、あと一人を降ろそうとしたとき、エルがかなり苦しそうな声を出した。
「は、早く・・・グロウ・・・アタシも、もう、持たない・・・」
「あと一人・・・もう少しだけ我慢してくれ・・・よし、降ろした」
俺は最後の一人を降ろすと、弾んだ声でエルに言った。
「よし、全員降ろしたぞ。エル、お前も早く逃げろ！」
「あり・・・がとうよ・・・グロウ・・・で・・・も、・・・アタシには逃げ
る力は・・・残ってない。・・・逃げら・・・れな・・・い」
「何ぃ！？」
俺は思わず大声で叫んでいた。振り返って見れば、エルは荒い息をつきなが
らようやく木を支えていた。足も震えていて、もういくらも持ちそうになかっ
た。
俺はその光景から予測できる最悪の未来図−エルが力つきて大木の下敷きに
なる−を想像して、ゾッとなった。
「冗談じゃない・・・」
思わず、そんな言葉を口にしていた。だが、本当に冗談じゃないと思った。
俺は、エルが木につぶされるのを見るために、子ども達を助けた訳じゃない。
「いいか、エル。必ず、必ず助ける。だからもう少しだけこらえてくれ」
俺はうめくように言うと、状況を観察するために数歩後ずさった。
エルにはああ言ったものの、彼女を助けられるかどうか、俺にはまったく自
信がなかった。今、木は根本からへし折れ、その真ん中あたりでエルが支えて
いる。エルを助けるためには、どうあってもあの木を「どうにか」する必要が
ある。幸い、もう子ども達が木にしがみついているわけではないから、その辺
の配慮はいらない。だけど・・・
（どうやったら助けられる？
自分の体力だけを頼りに、もう一回支える？
無理だ。最初に支えた時、エルと一緒に支えたのにあの木はビクともしなか
った。
ダウン寸前のエルと俺とで支えて、しかも左右どちらかにどかすなんて不可
能だ。
では、魔法は？多分、一番有効だろうが・・・、クリスやシェリルならとも
かく、俺の手持ち呪文で何が出来る？あの木を浮かせるか、二つに切ってし
まえればいいんだが・・・〈ニードル・スクリーム〉で切る？あの太い木で
は無理だ。あとは〈アイシクル・スピア〉と〈ルーン・バレット〉だが・・
・〈ルーン・バレット〉で木を焼く？馬鹿野郎、エルを焼き殺す気か？
後は魔法アイテムだけか・・・くそっ、ジョートショップ戻る余裕があれば、
いくらでも魔法アイテムがあるのに・・・魔法アイテムさえあれば・・・）
「お兄ちゃん」
その一言で俺は、愚痴になりはじめた思考を中断した。声のした方を見ると、
ついさっき助けた男の子が、心配そうに俺を見上げていた。
「何だい？」
「あのお姉ちゃんを助けるのに魔法アイテムが必要なの？」
「え？」
「魔法アイテムって言っていたでしょ？」
その一言に、俺は思わず苦笑しかけた。どうやら、エルを心配するあまり、
考え事を口にしていたらしい。俺は自分の間抜けさ加減に対する全ての反応を
苦労しつつ押し殺すと、その場にしゃがみ込んで、その子の顔をまっすぐに見
つめた。
「何かあるのかい？」
「うん、これでよかったら、使ってよ」
そう言って、その子は自分の持っている魔法アイテムを俺に見せてくれた。
それをきっかけに、その場にいた子ども達全員が魔法アイテムを出してくれた。
「子供用の魔法アイテムか・・・どこまで使えるかは分からないが、見てみる
か・・・」
俺はそう呟いて、子ども達が提供してくれたアイテムを１つ１つ調べていっ
た。そして、あるアイディアが脳裏に浮かんできた。かなり無茶苦茶なシロモ
ノだったが、他に何も思いつかなかった俺は、
（とりあえず、やってみるか）
と内心で呟き、子ども達を集めて指示を出した・・・
暗転 エル・サイド
アタシがこうやって木を支えてから、どれくらいの時間が経ったか、もう見
当もつかなくなっていた。１０分程度にも思えるし、もう１時間以上もたった
ような気がする。グロウが何かしているのは分かっていたけど、視界がぼやけ
てきたから細かいところは何も分からなくなってきた。
（グロウ・・・もういいよ、もういいから。アタシを見捨てろ・・・子どもに
アタシがつぶされるのを見せる気か？）
アタシは朦朧としてきた頭でそんな事を思っていた。
体の感覚がなくなっていくのが、はっきりと分かる。もう、限界だ・・・、
そう思ったアタシの意識に、何かが引っかかった。
（変だな、いくら感覚がなくなったからって、重さまで消えるはずないのに・
・・妙に頭の上が軽い・・・それとも、こんな時って重量感覚まで消えるの
かな・・・）
薄れていく意識の中で、アタシはそんなどうでもいいことを考えていた。そ
して、アタシは自分が前のめりに倒れていくのを感じて、気を失った。
安堵 グローウォーム・サイド
「やった・・・！」
ゆっくりとではあるが持ち上がりはじめた木を見て、俺は小さく呟いた。そ
して、手にしていた物を再び枝にからみつかせた。からみつかせたのは、子ど
も達からもらった風船。風船と言っても、魔法アイテムの風船で、並の風船よ
りも浮力が大きい。俺はこの風船を大量に膨らませて、枝という枝にからみつ
かせたのだ。
それにしても、全ての枝に風船がからみついた木が、少しづつ持ち上がって
いくというのは、現実のものとなってもかなりシュールな光景だ。呆れ半分に
それを見つめる俺の耳に、何かが倒れる音が入った。
「エル！？」
慌てて振り返ると、そこには予想通りの光景があった。気を失ったエルが、
その場に崩れ落ちていた。
「エル！」
思わず叫ぶと、俺はエルを仰向けに寝かせた。
「おい、エル、しっかりしろ！」
大声で呼びかけるが、エルは何も反応を示さない。嫌な予感を覚えた俺は、
ほおを軽くたたきつつ叫んだ。
「おい、エル、起きろ！目を覚ませ！！」
「うぅん、ん・・・グ・・・ロウ・・・？」
「エル！」
「・・・助かったのか・・・アタシ・・・？」
ちょっとぼうっとした口調で、それでもはっきりと反応を示したエルを見て、
俺は安堵のあまり力が抜けてその場にへたりこんでしまった。そのまま、エル
をしっかりと抱きしめた。彼女がそこにいる事を実感したくて・・・
「・・・良かった、本当に良かった・・・」
俺は、心からそう思った。もし、エルが目を覚まさなかったら、７年前のあ
のときのように死なれていたら、俺は・・・
「グロウ・・・ちょっと・・・苦しい・・・」
「え？あっ、ああ、ごめん」
俺は慌ててエルを離した。無意識のうちに力を込めすぎたらしい。俺の腕か
ら解放されて一息ついたエルは、ちょっと照れたような微笑みを見せた。
「グロウ・・・助かったよ・・・ありがとう・・・」
戸惑い気味の声。以前からそう思っていたけど、自分の感情を素直に示すの
に抵抗があるらしい。でも、そうだからこそ、言葉の端々からエルの本当の心
−内側にある暖かい部分−が見える気が、俺にはした。
そんな暖かさを感じながら、俺は後ろの子ども達を指した。
「いや、・・・あの子たちのおかげさ。俺にアイテムを貸してくれた、な・・・」
「へへっ」
「そっか・・・ありがとうな、みんな！」
自慢げな笑顔を見せる子ども達に、エルは今度こそ濁りや照れのない笑顔と
共に礼を言った。その笑顔に見とれつつ、俺は思っていたことを口にした。
戸惑い エル・サイド
「でも・・・エルは本当に良くやったよ」
この一言が、グロウの口からさりげなく投げかけられた。
「え？」
アタシは、まじまじとグロウの顔を見つめた。
アタシが？冗談だろ？アタシはただ、支えていただけなのに？
そう思ったけど、グロウの奴はいたって真面目な表情だ。少なくとも、いつ
ものおとぼけや軽口を言っているようには見えなかった。
「・・・あ、アタシは・・・べつ・・・に・・・」
なにもしてない。そう言おうとしたんだけど、グロウの顔を見ているうちに、
それさえもなんだか照れくさくなって、アタシの声はどんどん小さくなった。
ったく、アタシらしくない。アタシは気恥ずかしさや照れくささを振り払う
ように、勢いつけてグロウから目を反らすと、出来るだけいつもの口調を作っ
て言って見せた。
「みんな・・・運が良かったんだよ・・・！」
この一言に、グロウはすぐには反応を返してこなかった。少しだけ間を置く
と、なんだか笑いを含んだ声が返ってきた。
「まあ、そういうことにしておこうか」
「何だよ、それ！？」
アタシが思わずグロウに視線を戻すと、あいつは穏やかな、何もかも承知し
ているかのような微笑みをたたえてアタシを見つめていた。さらに、アタシが
何か言いつのろうとした時、グロウは突然渋い表情なって小さく呟いた。
「嫌な奴が来た・・・」
「え？」
グロウが親指で自分の背後を指し示した。そこには、アルベルト以下の自警
団の面子が駆けつけてくる姿があった。グロウは黙って立ち上がると、つまら
なそうな表情で呟いた。
「さっさと姿を消そう。エル、立てるか？」
「あ、ああ・・・」
差し出された手をつかんで立ち上がると、アルベルトの大声が飛んできた。
「待ちやがれ、グローウォーム！」
「誰が待つか」
小さい、だけど徹底的に敵意を込めた声で呟くと、グロウはアタシを振り返
った。
「走るよ。大丈夫か？」
「お前と一緒にするな。鍛え方が違う」
「それでは、逃げるとしますか」
アタシとグロウはニヤリと笑うと、走ってその場から逃げた。背後から、子
ども達の不満の声が上がったけど、こればっかりは許してもらおう。何しろ、
コイツがアルベルトと口をきいた日には、聞くに耐えない雑言、皮肉、嫌味合
戦が繰り広げられてしまうんだから・・・
アタシの家、つまりマーシャル武器店に逃げ込んだアタシ達は、ここで休む
ことにした。
「なあ、グロウ。一つ聞いていいか？」
呼吸を整えながら、アタシはさっきの事件で気になったことをグロウにぶつ
けてみた。
「何？」
「あのさ、さっき子ども達を助けた時、お前、子ども達が助かった時より、ア
タシが助かった時の方が嬉しそうにしていたろ。あれ、なんかわけでもある
のか？」
「ん・・・まあ、大したわけはないんだが・・・」
グロウの奴は、何だか話しづらそうにしていたが、やがてゆっくりと話し始
めた。
「まあ、今回の一件と似たような事があったんだよ。ただ、その時はエルと同
じように支えていた奴を助けられなかったんだけどね・・・」
「・・・・・・・」
「その時は何も考えずに飛び込んだんだけどね。そいつ、自分のことは気にす
るなって言って、俺の事を突き飛ばしたんだよ。で、当のそいつは木に押し
つぶされたのさ」
「グロウ・・・」
「で、そのつぶされた奴ってのが、俺のオヤジなんだ」
「！！」
「たまらないぜ、そんなものを見せられたこっちは。いくら気にするなって言
われても、見殺しにしたっていう気持ちは消えるもんじゃないからな」
「悪いこと、聞いたみたいだね・・・」
「気にするな、隠しておくほどのものじゃない。あえて言いふらすものでもな
いけど」
口に出してはそう言ってくるが、グロウの顔には明らかに浮かない表情をし
ていた。そんな表情のまま、アタシをじっと見つめてきた。
「だからな、エル。今度から人を助ける時には、自分が死なないように注意し
てやってくれ。そうでないと、助けられる方の心が傷つく」
「知らないよ、そんなこと・・・」
とっさに言い返したけど、力を込めて断言は出来なかった。
アタシが死ぬと誰かが傷つく？アタシにはとても信じられなかった。大体・・・
「アタシが死んで、悲しむ奴なんているかよ・・・」
思ったことがなめらかに口をついて出た。本当にそう思っている。魔法も使
えない変なエルフが消えた所で、誰も悲しまないだろう。
「少なくとも、ここに１人・・・」
グロウの奴がポツリ、という感じで一言呟いた。その一言に驚いて、アタシ
がグロウの顔をまじまじと見つめると、あいつはアタシを見つめ返しながら続
けた。
「それに・・・トリーシャやシェリルもきっと悲しむだろうね。マリアだって、
きっと泣きながら盛大に文句を言うと思うよ・・・」
「グロウ・・・」
「だからな、エル。自分一人の力じゃどうにもならないと思った時は、気にせ
ず俺を頼れや。俺でも少しくらいは役に立つだろうからさ・・・」
「・・・・・・」
グロウの言葉に、アタシは何も言わなかった。違う、言えなかった。「頼っ
てくれ」なんて言葉、生まれてはじめてかけられた。だから、何て返せばいい
のか分からないで、その場に立ちつくしたんだと思う。
「グロウ・・・」
本当に、いいのか？いつもずけずけと嫌な事を言う、冷血呼ばわりされてい
るアタシが頼っても・・・。
そう思ってじっとグロウの顔を見つめる。そうすると、コイツはいつもと同
じ、穏やかな表情でアタシを見つめていた。どっちかって言うと、コイツの方
がアタシに頼み込んでいる時の表情で・・・。
このバカ、なんて表情でアタシを見るんだよ。そんな表情されたら、断れな
いじゃないか・・・。でも、素直に聞き入れてやるのは、何か腹が立つな・・・。
「ふん、そんなに言うなら、少しくらいは頼ってやるよ。せいぜい足手まとい
にならないようにがんばりな」
「ありがとうよ、エル」
ほとんど憎まれ口に近いものを言ったのに、グロウの奴はむしろ安心したよ
うに微笑んだ。そして、いつもの軽い調子で付け加えた。
「じゃあ、またな。明日もよろしく頼む」
「ああ、またな」
グロウの奴がいなくなると、髪を軽くかきあげつつ、心の中で呟いた。
まあ、トリーシャ並とは言わないけど、もう少しあいつの事、信じてやると
するか・・・。
ＥＮＤ
後書き
松 ：いやあ、ようやくまとまった。というわけで「ＢＩＧ ＴＲＥＥ」をお
届けいたします
エル：まとまった、はいいけど、お前、確かこのＳＳ、８月の半ばには仕上げ
るとか言ってなかったか？
松 ：言いましたっけ、そんなこと？最近、忙しいもんだから、物忘れがはげ
しくって・・・
エル：なんなら、よーく思い出せるようにしてやろうか？（エル、指を鳴らす）
松 ：だああっ、すいません！本当は８月２０日までには仕上げるつもりだっ
たんですが、夏コミを計算に入れてなかったんです！！
エル：ったく、最初っから、素直に謝ればいいものを・・・。で、それだけじ
ゃないんだろ？
松 ：あはは・・・実はＮｉｆｔｙのフォーラムで、エタメロのドラマＣＤ第
２弾の企画を練ろうっていうのがありまして・・・
エル：で？
松 ：そっちに気を取られているうちにずるずると・・・。他にもまあ、ＭＯ
ディスクが暑さに負けてクラッシュしたりとか・・・
エル：やれやれ
さて、エルさんとのかけあいはここまでにして、ちょっと作品の事を・・・
この話はタイトル通り、「ＢＩＧ ＴＲＥＥ」をそのまま再現しています。
ただ、イベントクリア時の「みんな運が良かったんだよ！」に、主人公に「ま
あ、そういうことにしておこう」の一言を返させたいがために書いたようなも
んです。（笑）
そして、主人公、グローウォームのことですが、こいつは「悠久」本編の主
人公とはまったくの別人のような性格をしています。結構、きつい経験もして
います。ま、その辺はおいおいはっきりするでしょう（どうせ、彼を使ってＳ
Ｓを書くし・・・）。データはこんなもんです。
名前 グローウォーム・グレイフォード（通称、グロウ）
年齢 ２０
身長 １７５センチ
体重 ７０キロ
技能 戦闘術１、物理魔法１、盗賊１、料理２、舞踏１
１ｓｔプレイ（メンバー、エル、クリス、パティ、ＥＤエル）時のものです。
なぜか料理が２もあって大笑いしました。ちなみにグローウォーム（Ｇｌｏｗｗｏｒｍ）
の由来は二次大戦のイギリスの駆逐艦から。グローウォームの意味は「ホタル
の幼虫」です。
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松