Ｎｅｗ　Ｐｏｗｅｒ

Ｎｅｗ　Ｐｏｗｅｒ

　今まで使ったことのない力を与えられると、ほとんどの人間はその力に振り
回される。なぜなら、力加減というものが全く出来ないからだ。これは、その
人がどれほど慎重であったとしても変わらない。せいぜい、周囲に与える害の
規模が変わる程度だ。
　エル・ルイスの場合もまた、例外ではなかった。
　これは、彼女が魔力という新しい力を得たばかりの一幕である・・・

　エンフィールドの西の山岳地帯。とかく魔物の類が出現するこの場所で、グ
ローウォーム、エル、マリアの３人と魔物の群れとが戦っていた。
「〈ルーン・バレット〉！！」
　マリアの魔法の直撃を機に、不利を悟った魔物達は逃走を開始した。それを
見て、グローウォームは軽いため息と共に呟いた。
「やれやれ、これで依頼の物が採れるな・・・」
　彼らがここに来たのは、ジョートショップに来た「魔物が出没する西の山に
生える各種薬草、香草類の採取」という依頼をこなすためである。
　フェニックス美術館の件もすでに終わった今、この依頼はグローウォーム１
人でこなすはずであったのだが、たまたまそれを知ったエルとマリアが「暇つ
ぶし」「新しい魔法の実験」を口実についてきたのだった。
「ね☆　ね☆　マリアの言った通りだったでしょ？」
「まぁ、そうだな。言った通り、ちゃんと新しい魔法を使えたな」
　マリアの嬉しそうな声に、グローウォームは苦笑混じりに頷いた。
　その光景を視界の端に認めつつ、弓を背中の矢筒に片づけていたエルが茂み
に隠れていた魔物に気がついた。
「グロウ！！」
　エルの警告と同時に、魔物がグローウォーム、マリアの２人目がけて跳躍し
た。その声に振り返ったグローウォームはマリアを小脇に抱きかかえて後ろへ
飛び、間合いを取る。
「ちいっ！エル、頼む！！」
「任せろ！」
　すでに準備を終えていたエルは、最近使えるようになった魔法を解き放った。
「〈ルーン・バレット〉！！」
　ブォオオオオン
「どわぁあっ！！」
　自分－正確には魔物だが－に向かってくる〈ルーン・バレット〉の火球、そ
れも〈ヴァニシング・ノヴァ〉の光球をも上回る大きさの火球を見て、グロー
ウォームは驚きの叫びと共に再び後ろへ飛んで、その火球から逃れた。
「あ・・・」
　その光景に、エルの頭に大きい水滴型の冷汗が生まれた。
『エル～～～！！』
「あはは・・・ゴメン。とっさの事で、加減するの忘れてた」
　グローウォーム、マリア、２人の息の合った抗議の叫びに、エルは何とも申
し訳なさそうにそう言った。
「ぶ～☆　忘れないでよ～」
「エル、お前の魔力って邪竜のそれなんだから加減しろって・・・」
　しなかったら本気で死人を出すぞ、そう言いつつ、グローウォームは内心で
ある決意をしていた。
　決してエルにとっさの魔法で助けてもらうような状態にはおちいるまい、と
・・・。

　ＥＮＤ

後書き

　松です。限りなく一発ＳＳに近い「Ｎｅｗ　Ｐｏｗｅｒ」をお届けします。

　個人的には同人誌の１Ｐか２Ｐの漫画をイメージして書いたつもりですが・
・・どんなもんでしょ？
　話としてはそのまんまです。魔法が使えるようになったばかりのエルが、魔
力の大きさ（なにせ供給源があれですから）に振り回される、という感じです。
　本当はシリアスな話もあるんですけどね；
　何故かこちらの方が思いついた＋短期に書けたので・・・
　半分、練習みたいな部分もありますけどね；

　それでは、こんなところで。

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　松